2026年、雪深い冬の津軽。
弘前から車で30分ほどの西目屋村「道の駅 津軽白神」で、こぎん刺しの新たな魅力を提示する展示会が開催されています。
その名も『こぎん刺しオモテウラ展』。
仕掛け人は、こぎん刺しの伝統模様を研究し、モダンにデザインする「kogin.net」の山端家昌(やまはた いえまさ)さんです。
今回は山端さんに展示の見どころと、壮大な「世界こぎん化計画」への想いを伺いました。
名称 | kogin.net |
公式 | ・Instagram https://www.instagram.com/kogin_net/ |
展示開催情報 | 『こぎん刺しオモテウラ展』 2026年1月10日(土)〜2026年3月31日(火) |
青森県南部地方出身の少年が「こぎん刺し」と出会うまで
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「実は僕、南部地方のおいらせ町の生まれで、高校まで『こぎん刺し』を知らなかったんですよ」
そう笑う山端さんは、1983年生まれの42歳(2026年1月現在)。
当時、山端少年が夢中だったのは、時代を席巻していた「小室ファミリー」。
「安室奈美恵ちゃんの衣装を作りたい! パリコレとかで最先端の服を作りたい!」
そんな夢を抱き、服飾デザインを学ぶために弘前実業高校へ進学。
転機が訪れたのは、高校在学中の2000年のことでした。
「伝統工芸なんか見向きもしない。興味もなかった」 という山端さんが先生の紹介で訪れたのは、田中忠三郎さんの古作こぎんの着物がずらっと並ぶ展示でした。
「見た瞬間に『なんだこの織物は?』と。
こぎんの大胆な模様、でも近くで見るとすごく細かい。
最初は織物だと思ってて、刺していることも何も知らずに見に行ってましたが、先生に聞きに行ったら色々とこぎん刺しのことを説明してくれて。
ただただ『あれ、かっこよかったな』という感覚だけが、ずっと頭に残ったんです」
最先端のモードを目指していた少年の感性に、津軽の女性たちの手仕事が、鮮烈なデザインとして刻まれました。
ファッションからグラフィック、そして「こぎん刺し」との再会
高校卒業後、東京の日本デザイナー学院に進学し、さらにデザインの学びを深める山端さんは、やがてファッション業界の現実を知ります。
「自分の名前でブランドを持てる人はごく僅か。
自分にはその才能がないと悟り、グラフィックデザインへ転向しました」
専門学校の研究科で、自由にテーマを決めていいと言われた時、ふと思い出したのが、あの弘前で見た「こぎん刺し」。
「青森でこういうのを見たんです」と先生に話すと、 「それ、めっちゃ面白いじゃん!」と大絶賛。
「あ、こぎんって周りの人は面白がってくれるんだ!」と気づいた山端さんは、こぎん刺しの模様をPCでデータ化する作業に没頭します。
これが、現在の「kogin.net」のスタート地点となりました。
ちなみに、そのこぎん刺しを面白がってくれた先生は、なんと今回の展示に「カチャアラズ」という名前で3Dプリンターで作ったこぎんオブジェクトなどを出展しています。

「あの頃はファッション業界を諦めてグラフィックに転向したけれど、今となっては、ファッションとグラフィックが『こぎん』で繋がりました。
夢も叶えたし、大満足です!」

『こぎん刺しオモテウラ展』の見どころ
そんな山端さんが手がける今年の展示テーマは『オモテウラ』。
こぎん刺しは普段表面の美しさを見ているのですが、刺している人だけが知っている秘密があります。
それは「表ができると同時に、裏にも美しい反転模様ができる」ということ。
「仕立ててしまうと裏は見えなくなります。
でも、あえて裏を見せる仕掛けにすることで、1つの作品で2度楽しめる。
今回はそれをプッシュしたくて、会場では作品を吊るして展示しています。
人が動けば、裏側も覗けるような工夫をしました」

展示されている作品の中には、伝統的な「豆コ」の柄を用いながら、表と裏を切り替えるだけで現代的なデザインに昇華させたものも。

「伝統をいじりすぎると、復元できなくなってしまう。
だから僕は伝統の図案(古作)は守りつつ、色の組み合わせや『表裏』という見せ方の切り口を変えることで、新しさを提案しています」
実際に会場で吊るされたタペストリーは、近づいてよく見ると裏面が手前に。
回り込んで初めて「こちらが表か!」と気づくほどの美しさ。
この展示方法は、こぎんファンならずとも必見です。

この冬、津軽で味わえる特別な「3つの体験」
山端さんの想いがたっぷり詰まったこの展示会。
期間中は、県外からも冬の津軽まで足を運びたくなる特別なイベントが目白押しです。
1.佐藤陽子さんの「ミシンで仕立てるこぎん刺し」ワークショップ

毎年好評の企画、こぎん刺しの第一人者・佐藤陽子さんによるワークショップ。
今年はなんと「1日目に刺して、2日目にミシンで仕立てる」というスペシャルな内容です。
刺して終わりではなく、会場のミシンを使ってその場で『ばね口ポーチ』などの物に仕上げます。
先生のプロの仕立て技術を間近で見られる貴重な機会ですよ。
開催日: 1月〜3月の特定日(連日開催あり)
費用: 300円(材料費込) ※加工代別途500円
※日程の詳細はイベント情報をご確認ください。
なお、遠方からお越しの方には、西目屋村の温泉宿泊施設「グリーンパークもりのいずみ」への宿泊がおすすめとのこと。
こちらは山端さんが客室のこぎん演出を手がけており、弘前駅からの送迎もあります。

2. 世界一の古作こぎんコレクションを撮り放題!?「古作こぎんオモテウラ鑑賞会」
2月7日(土)には、平川市の「農閑工芸記念館」への出張イベントも開催。
ここには、大正時代に活躍した大川亮氏が収集した古作こぎんが100点以上収蔵されています。
実はこちらは、古作こぎんの収蔵量で言えば世界一かもしれない場所なんだとか。
普段はあまり公開されていないのですが、今回は特別に写真撮り放題!
山端さんと佐藤陽子先生、そして大川さんのお孫さん(大川けい子さん)によるトークも楽しめます。
開催日: 2026年2月7日(土)①10:00~11:00 / ②11:30~12:30
会場: 農閑工芸記念館(平川市)
参加費:1,000円(税込)資料付き
要予約: 0172-74-3315(津軽白神ツアー)
3. こぎん刺しのオモテウラを山端さんがたっぷりと解説!

山端さんによる展示トークイベント「こぎん刺しのオモテウラ」は会期中2回開催されます。
1回目は初日の1月10日に開催され、近隣のこぎん刺しファン、作家さんが多く集まっていました。
次回は2月8日(日)に開催されます。
この日は貸切バスで巡る「なるほど!西こぎんツアー」参加者の方も、直接道の駅津軽白神に行く方も混ざって、大盛況が予想されます。
そして、この直前に展示作品も入れ替えがあり、前期は壁に展示されていた作品が後期は前面に出て裏側が見られるようになるなど、また新しい発見があるそうです。
チラシをゴミにしない「もったいない精神」のデザイン

今回の展示会のチラシには、ミシン目が入っています。
切り取ると「カード」になり、並べて模様を繋げたり、メモ帳として使ったりできる仕掛けです。
「チラシはどうしてもゴミになってしまうもの。
でも、ただ捨てるのはもったいない。
こぎん刺しも元々は布を補強して大切にする『もったいない精神』から生まれたものですよね。
生活の中にこれが置いてあるだけで、『暮らしのこぎん化』が1個成功するんです(笑)」
夢は「世界こぎん化計画」!

インタビューの最後、山端さんは壮大な野望を語ってくれました。
「僕の最終目標は『世界こぎん化計画』です(笑)。
タータンチェックやストライプなどと同じように、世界中のプリント柄の中に『Kogin』が当たり前にある未来を作りたい」
県外の人が駅を降りた瞬間から「さすが津軽だね、こぎんだらけだね」と言ってくれるのが理想だと語る山端さん。
かつてパリコレに憧れた少年は今、デザインという武器で、津軽の伝統を世界へ広めようとしています。
この冬はぜひ、西目屋村へ。
こぎんの「オモテ」と「ウラ」、そして山端さんの熱い想いに触れてみてください。
【イベント概要】 こぎん刺しオモテウラ展
● 会期: 2026年1月10日(土)〜3月31日(火)
● 時間: 9:00~16:00
● 会場: 道の駅 津軽白神 ビーチにしめや
● 料金: 入場無料
● 関連リンク: kogin.net / 道の駅津軽白神
● お問い合わせ: 0172-85-2855(道の駅) / ツアー・WS予約:0172-85-3315(津軽白神ツアー)
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